このたびの地震でお亡くなりになられた方々に謹んで哀悼の意を表しますとともに、被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。気象庁は今後1週間程度、同程度の地震への注意を呼びかけています(2026年7月28日発表)。
この記事は一般的な備えの情報です。現在被災されている地域の方は、お住まいの自治体・気象庁の最新発表を最優先してください。
この記事では、同行避難の正しい意味、いま被災地でできること、4つの避難の選択肢、5日分の防災グッズリストを解説します。
この記事の要点
- 同行避難とは、猫と一緒に安全な場所まで避難する「避難行動」のこと。避難所で同室で過ごせることを意味しません(環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」)。
- 猫のフード・水は、最低5日分(できれば7日分以上)の備蓄が環境省ガイドラインの目安です。
- 避難の形は在宅避難・同行避難・車中泊・預け先の4つ。わが家の答えを平時に決めておきましょう。
いま被災地・余震が続く地域にいる方へ。今できること
環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」は、飼い主自身の安全確保をペットとの避難の大前提としています。まずご自身の安全を最優先に、今からできることを整理します。
猫が隠れて出てこないときは
地震のあと、猫が家具の下などに隠れて出てこないのは、自分で安全な場所を選んで身を守ろうとする自然な行動です。狭い場所に入ることが猫の安心につながる理由は、猫はなぜ箱に入る?狭いところが好きな理由でも詳しく解説しています。揺れが続いている間は、無理に引き出そうとしなくて大丈夫です。
先に確認したいのは、人の逃げ道と猫の脱走経路です。開いたままの窓や玄関があれば閉めてください。環境省の「熊本地震における被災動物対応記録集」によると、2016年の熊本地震では、揺れに驚いて逃げ出し放浪状態となったペットが多数いました。玄関や窓の開け閉め、キャリーへ移すときは、脱走に特に注意してください。
今夜からできる備え直し
環境省ガイドラインから、発災後でもすぐ実行できるものを挙げます。
- フードと水を最低5日分(できれば7日分以上)確保する。療法食の猫はさらに多めに
- キャリーバッグを出して室内に置く。プラ製組み立て式はガムテープで周囲を固定
- 持ち出しセット(薬・フード・水・使い慣れた猫砂または使用済み猫砂の一部・食器)をまとめる
- 猫の写真をスマホで撮り、ワクチン・投薬・かかりつけ動物病院の情報をメモする
- 避難先がペット受け入れ可能か、方法とあわせて自治体に確認する(避難所ごとに異なります)
なお、避難やペット受け入れの情報は自治体・気象庁の公式発表で確認し、SNSの未確認情報の拡散は控えてください。
停電・断水が続くときの暑さと水・フードの注意
この季節の停電で心配なのは、エアコン停止後の暑さです。獣医師監修の解説(アニコム損害保険・SBIペット少額短期保険)では、部屋の風通しをよくする、遮光カーテンで直射日光を避ける、飲み水を複数箇所に置く対策が挙げられています。環境省の熱中症対策資料(日本救急医学会監修)も、停電時は断水の恐れがあるとして浴槽やポリタンクへの水のため置きを勧め、凍らせたペットボトルは飲み水にも冷却にも使えるとしています。猫の冷却に使うときは直接当てず、タオルや布で包み、猫が自由に離れられる置き方にしてください。
フードは夏場の傷みにも注意を。ウェットフードは開封後2時間以内に食べ切り、残りは冷蔵で2日から3日が目安です(ヒルズ公式)。
ぐったりする・口を開けて呼吸するなどの様子は熱中症のサインとされます(前出の獣医師監修記事)。自己判断せず、すぐ獣医師へ相談してください。
平時からの暑さ対策と熱中症サインの見分け方は、猫の夏の暑さ対策|やりがちNGと正しい方法で詳しく解説しています。
車中で猫と過ごしている方へ
注意点は次の2つです。
1つめは車内の温度です。環境省ガイドラインは、ペットだけを車中に残すときは温度に常に注意して十分な飲み水を用意し、長時間車を離れる場合は安全な場所に移すよう求めています。JAFのユーザーテスト(2012年8月・外気温35℃)では、エアコン停止後の車内は最高57℃、サンシェード装着でも50℃、窓を3cm開けても45℃。停止から15分で熱中症指数が危険レベルに達したテストもあります。猫だけを車内に残さないでください。
2つめは飼い主さん自身の体です。車中泊では、エコノミークラス症候群や熱中症への対策と注意が必要とされています(同ガイドライン)。
また、食欲不振・嘔吐・下痢は避難生活で報告の多いストレス兆候です(環境省ガイドライン・記録集)。続く場合は自己判断せず、獣医師に相談してください。
同行避難とは?同伴避難との違い
ここからは、被災地以外にお住まいの方に向けて、今日から始められる備えを整理します。
「ペットとの同行避難が原則」と知っている飼い主は19.2%だったという調査があります(アイペット損害保険「2022年ペットのための防災対策に関する調査」・2022年2月実施・N=1,015)。同行避難という言葉自体、まだ広く知られていません。
環境省ガイドラインの定義では、同行避難とは「災害の発生時に、飼い主が飼養しているペットを同行し、指定緊急避難場所等まで避難すること」。つまり安全な場所まで移動する「避難行動」を指す言葉です。一方の「同伴避難」は、避難所でペットを飼養管理している「状態」を指します。ただしこちらも同室とは限らず、飼養環境は避難所ごとに異なります。
環境省が同行避難を推奨する理由
環境省は、災害時のペット対策は飼い主による「自助」が基本としています。ペットを残して避難すると、ペット自身が危険にさらされるだけでなく、放浪動物の発生や繁殖など、被災地域全体の問題につながった過去の事例(2000年の三宅島噴火、2011年の東日本大震災)があるためです。同行避難は、動物愛護と被災地域の安全・公衆衛生の両面から必要とされています。
避難所で猫と同室で過ごせるとは限らない
注意したいのは、「同行避難=避難所で猫と一緒に過ごせる」ではないことです。避難所では屋外や別スペースでの飼養となる場合が多く、受け入れ環境は避難所ごとに異なります。
2016年の熊本地震では、この解釈の誤りから「ペット同行避難はできない」という情報がSNSで拡散され、被災地に混乱が生じたことが環境省の記録集に残されています。巡回調査では、調査時までに同行避難があったとされる避難所は62.5%(85/136カ所)にのぼった一方、屋内でのペット飼養が確認されたのは15避難所にとどまりました(同記録集)。
避難所には動物が苦手な方やアレルギーのある方もいます。猫が悪いのではなく、避難所という環境が人にも猫にも無理を強いる構造なのです。だからこそ、避難所以外の選択肢も平時に考えておくことが大切です。
「わが家の避難計画」:4つの選択肢を平時に決めておく
同行避難の原則は、備えの出発点として正しい考え方です。ただし、避難所の受け入れ環境は場所ごとに異なり、猫は環境の変化に強いストレスを受けやすい動物です。だからこそ「在宅避難・同行避難・車中泊・預け先」の4つから、わが家の第1候補を地震が来る前に決めておくことをおすすめします。
在宅避難:環境変化に弱い猫の第一候補
自宅の安全が確保できる場合、自宅にとどまり、支援物資や情報を指定避難所などに取りに行く方法があります(環境省ガイドライン)。堅牢なマンションなどでは、在宅避難を推奨する自治体もあります。飼い主は避難所に身を寄せ、自宅の猫の世話に通う方法もありますが、二次災害の危険がある場合は避けて同行避難するとされています。前提は、家具の固定とハザードマップでの立地確認です。
同行避難:避難先のルールを事前に確認
避難所や避難ルートの事前確認は、環境省が挙げる飼い主の責務のひとつです。お住まいの地域の避難所がペットを受け入れているか、屋外か別室かといった受け入れの形態を、平時に自治体へ確認しておきましょう。
車中泊:選ぶなら「計画的に」
環境省の記録集には、2016年の熊本地震で、ペットとともに車中泊をした被災者がいたことが特徴のひとつとして記録されています。危険なのは車中泊そのものではなく、無計画な車中泊です。選ぶ場合は、手足を伸ばして眠れる状態を作り、遮光や換気を行い、エコノミークラス症候群と熱中症への対策をとります(環境省ガイドライン)。そして、猫だけを車内に残さないこと(真夏の車内は最高57℃の実測データがあります)。
預け先:親戚・知人などの当てを作っておく
状況によっては同行避難が難しい事態も考えられるため、親戚や知人など、万一のときの預かり先を確保しておくことが大切だと、西宮市などの自治体が案内しています。環境省ガイドラインの備蓄品リストにも、飼い主以外の緊急連絡先・預け先情報が挙げられています。かかりつけの動物病院に、災害時の預かりの可否を相談しておくのもひとつの方法です。2016年の熊本地震でも、一時預かりの依頼が急増しました(環境省記録集)。
わが家はどれ?決め方の目安
- 自宅の耐震性と立地(ハザードマップ)
- 猫の性格(環境の変化への耐性)
- 家族構成・車の有無
- 預け先の当てがあるか
1つに固定せず、第1候補とバックアップを決めておくのが目安です。
猫の防災グッズリスト(最低5日分の目安)
環境省ガイドラインは、ライフラインの被害や避難生活に備え、ペット用の物資を「少なくとも5日分(できれば7日分以上)」用意することを目安としています(東京都も同水準を案内)。救援物資は、普段のフードと同じものが手に入るとは限りません。備蓄品を持ち出しの優先順位ごとに整理します。
優先順位1:命に関わるもの
療法食・薬(特別食の猫はさらに長期間分)/フード・水(少なくとも5日分、できれば7日分以上)/キャリーバッグやケージ(猫の避難に必須。プラ製組み立て式はガムテープ固定)/予備の首輪・リード(伸びないもの)/ペットシーツ・排泄物の処理用具/トイレ用品(使い慣れた猫砂、または使用済み猫砂の一部)/食器
優先順位2:猫の情報がわかるもの
飼い主の連絡先と飼い主以外の緊急連絡先・預け先情報/猫の写真(印刷+スマホ保存)/ワクチン接種状況・既往症・投薬中の薬・かかりつけ動物病院の情報
猫の首輪は、ひっかかり防止のため力が加わると外れるセーフティタイプがよいと言われます。ただし外れると、迷子札も一緒に失われます。そのため、セーフティタイプを使う場合、ガイドラインはマイクロチップの装着を強く推奨しています。マイクロチップは2022年6月から販売業者に装着・登録が義務化され、購入した飼い主は自分の名義への「変更登録」が義務、それ以外の一般の飼い主は装着が努力義務です。登録先は環境省「犬と猫のマイクロチップ情報登録」(指定登録機関: 日本獣医師会)です。
2016年の熊本地震では、保護収容された猫1,405頭のうち、飼い主に返還できたのは11頭でした(犬は1,094頭中400頭。原典には保護収容と通常の捕獲を区別していない旨の但し書きがあります)。迷子札とマイクロチップ、登録情報の最新化が、猫を家に帰す備えになります。
優先順位3:避難生活の日用品
タオル・ブラシ/ウェットタオル/ビニール袋/匂いのついたお気に入りのおもちゃ(猫の安心材料)/ガムテープ・マジック(ケージ補修や掲示に多用途)/洗濯ネット(猫の保護や屋外診療に有用)
夏場は、ポリタンクなどの生活用水と凍らせたペットボトルも停電・断水への備えになります(環境省資料)。重いもの・大きいものは屋外倉庫など保管場所を工夫し、安全確認後に持ち出します。すべてを一度にそろえる必要はありません。日常の買い置きを1袋増やすところからで十分です。
キャリーを嫌がる猫に。今日からできる練習
環境省ガイドラインが挙げる猫の平常時対策の筆頭は、「ケージやキャリーバッグに入ることを嫌がらないように、日頃から慣らしておく」ことです。キャリーに入れないのは猫の落ち度ではなく、安心な場所として経験する機会がなかっただけです。
キャリーを「安心な場所」にするステップ
- キャリーを部屋に出しっぱなしにして、家具の一部にする
- 中に毛布やおやつを入れて、良い経験を積んでもらう
- 扉を閉める時間を、短時間から少しずつ延ばす
- キャリーごと持ち上げて、室内を移動してみる
これは一般的な慣らし方の考え方で、進み方には個体差があります。うまくいかない場合は、かかりつけの獣医師に相談してください。あわせてガイドラインは、人やほかの動物に慣らす、決められた場所での排泄、ワクチン接種、寄生虫の予防・駆除、不妊去勢措置も平常時対策として挙げています。これらは避難所で受け入れてもらう際の前提にもなる健康管理です。
洗濯ネット・ハーネスに慣れておく。脱走は人間側の準備で防ぐ
災害時のパニックや脱走は、猫の正常な反応です。防ぐのは、洗濯ネットに平時から慣らしておくこと(洗濯ネットはガイドラインの備蓄品リストにも記載されています)、一般に勧められるハーネスへの慣らし、キャリーのガムテープ固定、玄関・窓の管理といった人間側の準備です。なお、「猫は放しても帰ってくる」ことを前提にはしないでください。災害時の屋外は危険が多く、帰還の保証はありません。
猫の防災についてよくある質問(FAQ)
Q1. 同行避難と同伴避難の違いは何ですか?
同行避難は、猫と一緒に安全な場所まで避難する「避難行動」を指し、避難所内で一緒に過ごせることを意味しません。同伴避難は避難所でペットを飼養管理している「状態」を指しますが、こちらも同室とは限りません(環境省ガイドライン)。
Q2. 猫の防災グッズは何日分用意すればいいですか?
フード・水は少なくとも5日分、できれば7日分以上が環境省ガイドラインの目安です。療法食はさらに長期間分を。救援物資に猫用があるとは限らないため、飼い主の備えが基本です。
Q3. 地震のとき猫が隠れて出てきません。どうすればいいですか?
隠れるのは、猫が自分で安全を確保しようとする自然な行動です。無理に引き出さず、まず飼い主自身の安全を確保し、窓や玄関を閉めて脱走経路をなくしてから、落ち着いて様子を確認してください。
Q4. キャリーを嫌がる猫はどう慣れさせればいいですか?
日頃からキャリーを部屋に出し、「安心できる場所」として経験してもらうのが基本です(環境省の平常時対策にも明記)。扉を閉める時間は短時間から段階的に。
Q5. 避難所に猫を連れて行けない場合はどうすればいいですか?
在宅避難・車中泊・預け先(親戚・知人など。かかりつけの動物病院にも相談を)が選択肢になります。自治体も預かり先の確保をすすめています。環境の変化に弱い猫には、自宅の安全が確保できる場合の在宅避難が有力な候補です。
Q6. 猫にマイクロチップは必要ですか?
販売業者から迎えた猫は変更登録が義務、それ以外は装着が努力義務です。2016年の熊本地震では、保護収容された猫1,405頭のうち飼い主へ返還できたのは11頭でした(保護収容と通常捕獲の区別なし)。迷子札との併用と、住所・電話など登録情報の最新化をおすすめします。
まとめ:小さな一歩から始める猫の防災
- 同行避難の正しい意味を知る(避難所で同室、ではありません)
- 在宅避難・同行避難・車中泊・預け先の4択から、わが家の第1候補を決める
- 5日分の備蓄とキャリー練習から始める
すべてを今日やる必要はありません。キャリーを部屋に出す、フードを1袋多く買う。そこからで十分です。
ご注意
- 避難指示・避難所の開設状況・ペット受け入れの可否は、自治体や避難所によって異なります。必ずお住まいの自治体の公式発表をご確認ください。
- 愛猫の体調に異変がある場合は、自己判断せず獣医師にご相談ください。
- 余震活動や避難所の状況は変化します。最新情報は、気象庁・自治体など公的機関の発表を最優先してください。
公開日: 2026年7月29日(最終更新日: 2026年7月29日)
参考文献
1. 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」(平成30年)
2. 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン〈一般飼い主編〉」
3. 環境省「熊本地震における被災動物対応記録集」(平成30年3月)
4. 環境省「ペットの災害対策」
5. 環境省「犬と猫のマイクロチップ情報登録について」
6. 東京都保健医療局「『同行避難』するために・・・日ごろからの備えが大切です」
7. 西宮市「ペット(動物)のための防災」
8. JAFユーザーテスト「真夏の車内温度」(2012年8月実施)
9. アイペット損害保険「2022年ペットのための防災対策に関する調査」(2022年2月実施・N=1,015) https://www.ipet-ins.com/info/30521/
10. 環境省「エアコンが使用できないときの熱中症対策」(日本救急医学会監修)
11. アニコム損害保険「猫も熱中症になる?症状、予防法を知って万全の対策を!」(猫との暮らし大百科・獣医師監修)
12. SBIペット少額短期保険「猫の熱中症とは?気になる対策とその症状を重症度別に解説」(獣医師監修)
13. ヒルズ「ペットフードの保存方法に関するアドバイス」