犬派だった私が、保護猫活動を始めるまで|ゲストネコラム
ネコノイロ代表 ひぐち
2026年10月15日
こんにちは。一般社団法人 Neko no Iro 代表の樋口と申します。
今回ご縁をいただき、私が普段行っている保護猫活動について、こちらのコラムで書かせていただくこととなりました。
よろしくお願いいたします。
犬派だった私と、猫へのイメージ
私は以前、ペット用品の会社で商品企画の仕事をしていました。
自宅には愛犬が3頭。自他ともに認める、完全なる「犬派」の飼い主でした。
仕事柄、撮影や取材などで猫と接する機会はありました。でも、当時の私の中にあった猫のイメージは、どちらかというと「ツンとしている生き物」。
正直、猫のかわいさというものを、まだよく分かっていなかったのだと思います。
そんな私が福岡へ引っ越してきたのは、2023年。結婚をきっかけに、愛犬たちと一緒に新しい土地での生活を始めました。
シニアになった愛犬たちとのんびり暮らせたらいいなと思っていました。


福岡で聞こえてきた仔猫の鳴き声
ある日の夕方、スーパーへ向かって歩いていると、どこからか仔猫の鳴き声が聞こえてきました。
「大丈夫かな……」
心臓がざわざわしました。
気にはなったものの、そのときの私は猫を保護した経験もありません。
「とりあえず買い物に行こう。帰ってきてもまだ鳴いていたら、そのとき考えよう」
そう思って、その場を離れました。
そして買い物を終えて帰ってくると――
やっぱり鳴いている。
その声を聞いた瞬間、「どうにかしなくちゃ」と思いました。
一度自宅へ戻り、主人に事情を説明しました。
「仔猫が鳴いてる。助けてあげたい」
今思えば不思議ですが、この言葉を口にするのには少し勇気がいりました。
主人と二人で、鳴き声のする民家の生け垣を見ていると、ご近所の方々も集まってきました。
話を聞くと、その仔猫は2、3日前からずっと鳴いていたそうです。
みんなが自宅からカゴやキャリーを持ち寄って、なんとか捕まえようとしました。
でも、捕まらない。
捕獲器を借りられないかと調べてみても、その時間はすでに行政の対応時間外でした。
4時間かけて保護した仔猫・旺志郎
そのとき、ふと思い出した人がいました。
以前SNSで見かけた、保護猫活動をしている方です。
Instagramで調べてみると、どうやら近くで活動されている。
思い切って連絡をすると、すぐに駆けつけてくださいました。
そして仔猫を見つけてから、およそ4時間。
ようやく活動者さんが手づかみでなんとか保護することができました。


自宅へ連れて帰り、愛犬たちのために置いてあったケージに入ってもらいました。
知らない場所に突然連れてこられて、きっと怖くて、不安だったのでしょう。
その子は一晩中、ずっと鳴いていました。
夜鳴きも何とか2、3日でなくなり、シャーシャーいっていたのがウソのように、ゴロゴロと喉を鳴らして甘えてくれるようになりました。
いまでは、私にとって大切な家族です。
愛猫には好奇心旺盛、食欲旺盛となるように「旺志郎(おうしろう)」と名付けました。

そしてこの出会いが、のちに私が保護猫活動を始めるきっかけになりました。
……とはいうものの。
この時点ではまだ、自分が保護猫活動をすることになるなんて、まったく思っていませんでした。
保護猫活動の現実を知る
旺志郎を保護したことで初めて知ったことがありました。
保護を手伝ってくださった活動者さんが、いつも本当に忙しそうだったことです。
次から次へと相談が入り、助けを必要としている猫がいる。
「保護猫活動って、こんなに忙しいんだ」
それまで知らなかった世界が、少しずつ見えるようになりました。
旺志郎のように、生まれてまだ数か月しか経っていない小さな体で、外の厳しい環境を生きている子たちがいる。
そして、そんな子たちが福岡だけでもたくさんいる。
「私にもできること」を考えて
いつか福岡での生活が整ったらお手伝いできたらいいな。
旺志郎が家に来てからは、そんなふうに考えるようになっていました。
でもSNSを開けば流れてくる連日「保護」の文字。
助けを求めている猫が、今日もいる。
いてもたってもいられなくなり、私はあの活動者さんにメッセージを送っていました。
「預かりボランティアなら、私にもできますか?」
まさか、あれほど犬派だった私が保護猫活動をすることになるなんて。
旺志郎を保護したのは今でも忘れられない、2023年6月10日。
そこから1頭、また1頭と、気づけば2週間でお世話している猫は全部で6頭になっていました。


「このままいけば我が家はどうなるんだろう」
そんなふうに怖くなったことも覚えています。
何の知識も経験もなかった私にとって、預かりボランティアはわからないことの連続でした。
かわいいだけではできないことも、少しずつ知っていきました。
それでも当時、お預かりした子たちは現在、それぞれの里親様のもとで元気に暮らしています。
最初はただ、「私にも何かできることがあるなら」と始めた預かりボランティアでした。
猫について詳しかったわけでも、保護猫活動について特別な知識があったわけでもありません。
むしろ、わからないことばかり。
目の前にいる小さな命と向き合いながら、ひとつずつ知って、ひとつずつできることが増えていきました。
そして、あれほど「犬派」だった私の暮らしの中に、いつの間にか猫たちがいることが当たり前になっていました。
振り返ってみれば、すべての始まりはあの日スーパーへ向かう途中で聞こえてきた、小さな鳴き声でした。
もしあの時、そのまま通り過ぎていたら。もし旺志郎と出会っていなかったら。
今の私は、きっと全く違う人生を歩んでいたと思います。
2023年6月10日。
一頭の仔猫を「助けたい」と思った、ただそれだけの日が、私の人生を大きく変える最初の日になりました。