子猫の爪とぎはいつから?始まる時期と、用意する時期は別です|nyansネコラム
nyans編集部
子猫を迎える準備をしていると、爪とぎをいつ用意するか迷います。爪とぎは、猫が爪を整え、体を伸ばし、自分の場所を示すための行動です。用意する時期の答えは、迎える日までです。行動のほうは、それより前にもう始まっています。始まる時期の根拠、まだとがないときの見方、かじるときの向き合い方、サイズの考え方を、出典つきで整理しました。
爪とぎ器を用意する時期は、子猫を迎える日までです。とぎ始めてから買うものではありません
爪とぎという行動そのものは、獣医行動学の教科書では生後5週ごろからとされています。日本で販売を通じて迎える子猫は、その時期をすでに過ぎています
早く用意すれば将来家具でとがなくなる、という研究は見つかりませんでした。用意することは「必要な条件」であって、「それだけで足りる条件」ではありません
子猫の爪とぎには、「行動が始まる時期」と「爪とぎ器を用意する時期」の2つの答えがあります。行動は獣医行動学の教科書では生後5週ごろからとされ、爪とぎ器は子猫を迎える日までに用意しておきます。
そもそも猫が爪をとぐ理由から知りたい方は「猫が爪をとぐ理由」もあわせてどうぞ。
結論:子猫の爪とぎは「迎える日」までに用意します
子猫の爪とぎ器は、とぎ始めてから買うのではなく、迎える日までに用意します。爪とぎという行動は、それより前に始まっています。
爪とぎとは
爪とぎとは、猫が前肢の爪を対象物に引っかけて手前に引く行動で、爪の外側の層を外すこと、爪あとと匂いを残すこと、前肢と背中を伸ばすことを同時に行っています。子猫では、爪を自分で出し入れできるようになった段階から見られます。
この3つは、米国猫獣医師協会(AAFP)の『Feline Behavior Guidelines』(2004年)が、猫が生まれつき持つ行動として挙げているものです。ただし嗅覚的な目印については "perhaps"、体を伸ばすことについては "It appears that … may" と書かれており、確定した事実としては扱われていません。DePorter と Elzerman(2019年、『Journal of Feline Medicine and Surgery』)も、爪の外層を取り除くこと、前肢と背中の筋肉を使うこと、体を伸ばすことを挙げ、指間腺による匂いの付着を別に説明しています。
爪とぎのたびに古い外側の層が剥がれることがあります。剥がれるのは爪ではなく外側の層です。周期の数値は確認できませんでした。
この記事の3つの結論を先に
- 用意する時期は「迎える日まで」。行動のほうは、もう始まっています。
- 「教え方」として広まっている方法の一部は、いまの根拠では支持されていません。
- 子猫の時期は、低くて安定した水平の形が選ばれやすいという実験があります。各比較の被験数は5〜6頭です。
この記事での「わかっている」の4段階
| ラベル | 意味 |
|---|---|
| 【実験で確認】 | 猫に選ばせた、または測定した査読論文があります |
| 【調査で確認】 | 査読論文の質問紙・横断調査です。関連は言えても、原因と結果は言えません |
| 【行動学的に有力】 | 教科書・ガイドライン・臨床レビューの記述。対照群を置いた検証ではありません |
| 【出典が特定できない通説】 | 日本語のWebで流通。根拠となる一次資料を特定できませんでした |
この記事では、根拠が特定できなかったものは、特定できなかったと書きます。
爪とぎが始まるのは生後5週ごろ——その数字はどこから来ているのか
獣医行動学の教科書では、子猫は生後約4週まで爪をうまく引っ込められず、生後5週ごろから正しくとぎ始めるとされています。
獣医行動学の教科書に書かれていること 【行動学的に有力】
獣医行動学の教科書『Feline Behavior: A Guide for Veterinarians』(Beaver, 2003年)には、子猫は生後約4週まで爪を正しく引っ込められず、生後5週ごろから正しくとぎ始める、と書かれています。Mengoli らが2013年に『Journal of Feline Medicine and Surgery』誌に発表した論文でも引用されています。
これは Mengoli らの調査結果ではなく、教科書からの引用です。同論文自体は、イタリアの飼い猫128頭への質問紙調査です。
AAFP(2004年)の発達段階表にも、3〜8週齢の欄に「爪とぎと捕食行動が始まる」、飼い主の対応として「爪とぎを用意する」とあります。同様の記述は専門団体のガイダンスにもありますが、根拠となる研究は示されていません。
開始する週齢を直接測った研究は、見つかりませんでした 【出典が特定できない通説】
子猫が爪とぎを始める週齢を実際に観察・計測して報告した査読論文は、今回の調査では見つかりませんでした。上の週齢は教科書に由来し、そこから引用されて広まった記述です。「研究でわかっている」と書ける段階ではありません。日本語のWebの目安も、次のように割れています。
【表2】日本語のWebで示されている「子猫の爪とぎの開始時期」の目安
| 媒体 | 示している目安 | 監修者 | 出典の記載 |
|---|---|---|---|
| 猫情報メディア(出版社系) | 生後1ヶ月を過ぎると爪の出し入れができる | 部署名のみ | なし |
| 個人ブログ(複数) | 生後1ヶ月くらいから | なし | なし(飼育経験) |
| 猫情報メディア(専門系) | 生後5週齢頃 | なし | 学術論文の記載あり(ただし挙げられた論文に開始週齢のデータは見つかりませんでした) |
※nyans編集部が2026年9月6日に「子猫 爪とぎ いつから」等で検索し、上位のページを確認したものです。記述の正しさを評価したのではなく、目安が割れているという事実を示すために並べています。示している時期そのものは近いのですが、根拠を示したページが1本もありません。学術論文を挙げているページもありますが、挙げられた論文に開始週齢のデータは見つかりませんでした。読む側に、確かめる手段が渡されていないということです。
爪と爪とぎの発達を、時期で並べると
【表1】子猫の爪と爪とぎの発達(時期別)
| 時期 | 爪の状態 | 見られる行動 | 迎える人ができること | 出典・確信度 |
|---|---|---|---|---|
| 生後約4週まで | 正しく引っ込められない | — | (母猫と過ごす) | Beaver (2003)【行動学的に有力】 |
| 生後5週ごろ | 出し入れができる | 正しくとぎ始めるとされる | — | Beaver (2003)【行動学的に有力】 |
| 生後3〜8週 | — | 爪とぎと捕食行動が始まる | 爪とぎを用意する | AAFP (2004)【行動学的に有力】 |
| 生後8週未満 | — | 形や置き方の好みが表れる | 迎える部屋に置く | Zhang et al. (2019)【実験で確認】 |
| 生後56日以降 | — | 販売を通じて迎える子猫が来る | 用意を終えておく | 環境省(公的資料) |
| 生後9〜16週 | — | 乳歯が抜け始める | かじった様子を見る | AAFP (2004)【行動学的に有力】 |
日本で子猫を迎えるとき、爪とぎはもう始まっています
日本では販売業者が生後56日を経過しない子猫を販売できません。教科書の言う爪とぎの開始時期を、すでに過ぎた子猫が家に来ます。

販売を通じて迎える子猫は、生後56日(8週)以降です
環境省は「STOP!生後56日までの犬猫販売!」で、「ブリーダーやペットショップなどでは、犬や猫が生まれてから56日(8週)を経過するまでは、販売や販売のための展示が禁止されています」と案内しています。令和元年公布の改正動物愛護管理法によるもので、2021年6月1日に施行されました。
前の章の週齢と重ねてみてください。爪とぎは生後5週ごろから始まっています。生後56日は8週です。ペットショップやブリーダーから迎える子猫は、爪とぎがすでに始まった状態で家に来ることになります。問いは「いつから教えるか」ではなく、迎える日に、とげる場所が置いてあるかです。
ただし、すべての子猫が8週以降に来るわけではありません
この規制の対象は販売業者です。保護猫の譲渡や知人からの譲り受けは対象ではないため、より早い週齢で家に来る子猫もいます。その場合の体調や育て方は、かかりつけの獣医師にご相談ください。爪とぎについて言えることは変わりません。
生後8週未満の子猫にも、すでに「好み」があります 【実験で確認】
Zhang らが2019年に『Journal of Feline Medicine and Surgery』誌に発表した「Preference of kittens for scratchers」は、子猫に選ばせた選好試験です。室内に2種類の爪とぎを並べ、20分間、爪をとぐのに費やした秒数を計測しました。対象は生後8週未満の避妊去勢済みの子猫、延べ40頭です。
S字型の段ボールと、おもちゃの付いた麻縄のポストの比較では、S字型への接触時間が有意に長くなりました(99.33±7.06秒 vs 14.92±11.85秒、P=0.03)。生後8週未満の時点で、すでに形や置き方の好みが表れているということです。好みは教えて作るものというより、迎えた時点である程度そこにあるものだと考えるほうが、実験結果には合っています。
限界も書きます。各比較の被験数は5〜6頭です。シェルターの子猫を対象にした20分間の試験で、家庭での長期的な使用行動を測ったものではありません。著者も、子猫と成猫の関わりが同じとは結論できないと書いています。
まだとがない子猫を、待っていい理由
子猫が爪とぎ器を使わないことは、それ自体が異常を示すものではありません。座布団や畳でガリガリしているなら、それはもう爪とぎです。
「爪とぎをしていない」と「爪とぎ器を使っていない」は違います
公開されている相談投稿に、こんな声があります。
「爪とぎはいつからしますか?3ヶ月をすぎたばかりの子猫がいます。…ゴザ素材の座布団にたまに飛び乗ってはガリガリやってますが、それ以外で爪をたてたりしません」(Yahoo!知恵袋)
座布団でガリガリしている時点で、爪とぎはもう始まっています。していないのではなく、私たちが用意した爪とぎ器のほうが選ばれていないだけです。覚えが遅いのではなく、置き場所と形が合っていないだけです。

まだとがないとき、見ておきたいこと
観察の目安として、次の3つを見てみてください。
- 家のどこかに、爪あとがついていないか
- 寝起きや遊んだあとに、前肢を伸ばす動作があるか
- 用意した爪とぎが、生活の動線から外れていないか
3つめには参考になる調査があります。Salgirli Demirbas らが2024年に『Frontiers in Veterinary Science』誌に発表したフランスの調査(猫1,211頭)では、猫が過ごす部屋に爪とぎを置いていることが、爪とぎの状況と有意に関連していました(p=0.00404)。ただし横断研究で、因果ではありません。
どのくらい待っていいのか
当社が2026年6〜7月に購入者52名へ伺った調査では(nyans調べ)、新しい爪とぎを使い始めるまでの期間は、その日のうちが25名、数日中が12名、1週間ほどが5名、2週間以上が10名でした。2週間以上かかった子が、およそ2割います。最初の数日で片づけると、この2割の子は「使わない子」と誤解されたまま終わります。購入者に伺った調査で、すべての猫での結果ではありません。詳しくは「猫が新しい爪とぎを使ってくれない…飼い主52人に聞いた効いた工夫」にまとめています。
食欲や動きにいつもと違う様子があるときは、爪とぎとは切り離して、かかりつけの獣医師にご相談ください。
よく紹介される「教え方」を、いまの根拠で見直す
前足を持って研がせる方法は、海外の専門団体が非推奨としています。キャットニップで誘う方法も、子猫では効果が確認されていません。
【表3】よく紹介される4つの方法と、いまの根拠
| よく言われること | 確認できたこと | 出典・確信度 |
|---|---|---|
| 前足を持って動作をさせる | 臨床レビューが明確に回避を推奨。猫がその場所を避けるようになる可能性があるため | DePorter & Elzerman (2019)【行動学的に有力】/National Kitten Coalition (2022) |
| キャットニップ・またたびで誘う | 生後8週未満の子猫では爪とぎ行動が変わらず。またたびの子猫での検証は確認できず | Zhang et al. (2019)【実験で確認】 |
| 大声を出す・水をかける | 爪とぎを止めようとした飼い主91名のうち、大声で叱る69.2%・水スプレー37.4%・叩く15.4%。いずれも爪とぎの頻度を減らす効果は示されず | Moesta et al. (2018)【調査で確認】 |
| 数を増やせば家具でとがなくなる | 関連の報告のみ。横断調査であり因果ではない | Wilson et al. (2016)【調査で確認】 |
※Moesta らの3つの割合は、不適切な場所での爪とぎを止めようとした飼い主91名を母数とした値です(質問紙は140名に配布、回収率82.9%)。原論文で確認しています。
まず、この記事の立場を書きます
「子猫 爪とぎ しつけ」と検索して、ここに来た方もいらっしゃると思います。爪とぎは、しつけで直す行動ではありません。猫が爪を整え、体を伸ばし、自分の場所を示すための正常な行動です。DePorter と Elzerman(2019年)も爪とぎを "a normal feline behavior"(猫にとって正常な行動)と位置づけ、正常な行動を修正したり罰したりすることはストレスを増やしうると書いています。私たちにできるのは、とぎやすい場所を用意することです。
前足を持って研がせる方法は、非推奨とされています
日本語のWebでは、この方法が広く流通しています。ある育児情報サイトには「爪とぎ器の前へ連れて行き、前足を持って爪とぎの動作を教えます」とあります。監修者名も参考文献もありません。
一方、米国の子猫保護団体 National Kitten Coalition は2022年の記事で、"Refrain from holding cats' paws and showing them how to use a scratching post or board."(猫の前足を持って使い方を見せることは控えてください)とし、おそらく猫を怖がらせ、やる気をなくさせると書いています。明確に非推奨ということです。
同じことを、査読誌の臨床レビューも書いています。DePorter と Elzerman(2019年)は、猫の前足をつかんで面に擦りつけることは避けるべきで、望んだ結果と逆になり、その場所を避けるようになりかねないとしています。関連して、Moesta ら(2018年)の調査で唯一有意だった所見は、猫を爪とぎのそばに連れて行った家庭では、用意した爪とぎをとぐ頻度がむしろ低かったというものでした。ただしこれも対照群を置いた検証ではありません。当社の別のコラムでも、AAFP と ISFM の行動ガイドラインが罰や強制を勧めていないことを根拠に、同じ方法をおすすめしないと書いています。なお DePorter と Elzerman(2019年)は、罰や叱責は常に避けるべきだと書き、音で驚かせる・水をかけるといった手段は恐怖や回避を生み、かえって悪化させることさえあるとしています。
キャットニップで誘う方法は、子猫では効果が確認されていません 【実験で確認】
先ほどの Zhang らの研究には6つめの実験があります。生後8週未満の子猫(被験数5頭)で、S字型の段ボール単独と、①乾燥キャットニップを添えたもの ②キャットニップオイル ③他の猫の毛 を比較したところ、いずれも有意差はありませんでした(P=0.69 / 0.75 / 0.63)。同論文は、生後3ヶ月未満の子猫がキャットニップにほとんど反応しないという先行研究(Espín-Iturbe ら、2017年、『Behavioural Processes』誌)を引き、脳の発達段階によるものかもしれないとしています。
書き分けが必要です。検証されたのはキャットニップ(Nepeta cataria)です。日本で一般的なまたたび(Actinidia polygama)を子猫で検証した研究は確認できませんでした。「またたびも効かない」とまでは言えません。またたびは一般に生後6ヶ月以降が目安と案内されますが、獣医師監修のWeb記事レベルの情報です。
読者の実感とも方向はそろっています。
「付いてきたまたたびを撒いても、縦にしても横にしてもしないんです…」(Yahoo!知恵袋)
効かなかったのは、猫のせいでも飼い主のせいでもありません。子猫にはまだ届かない方法だっただけです。効くのは置き場所と形と素材のほうです。
代わりに、いまの根拠が支持していること
- 猫が実際にとごうとしている場所のそばに置く(Salgirli Demirbas et al., 2024)。
- とげる場所を、猫が過ごす場所に用意する。AAFP と ISFM の2013年のガイドライン(Ellis ら)は、爪とぎのエリアを、食事・水・トイレ・遊び・休息と並ぶ主要な環境リソースのひとつとしています。
- 迎える部屋に、初日から置いておく。英国の猫専門団体 International Cat Care は、迎える部屋に食器・寝床・トイレ・おもちゃとともに爪とぎを置くよう案内しています。
- ご褒美については、2つの調査で結論が割れています。Wilson ら(2016年)ではご褒美を与えた家庭で、猫が好んで使っている爪とぎを毎日使うという回答が多く(80.4% vs 67.7%)、Moesta ら(2018年)では報酬をもとにした働きかけとの関連は示されませんでした。罰よりは支持されている、という整理までです。
子猫が爪とぎをかじる・口に入れるとき
子猫が爪とぎをかじることがあります。口にしてしまった場合は、量にかかわらず動物病院にご相談ください。自己判断はしないでください。
子猫の時期に、口に入れやすい背景があります
これも、実際にある相談です。
「うちの猫なんですが、爪とぎの段ボールを食べるんです…本当にガジガジ噛んで食べています、なんでだと思いますか??また食べても大丈夫なんでしょうか??」(Yahoo!知恵袋)
AAFP(2004年)の発達段階表では、3〜8週で乳歯が生えそろい、9〜16週で抜け始めるとされています。子猫が口を使って世界を確かめる時期と、乳歯の生え替わりの時期は重なります。
ただしこれは時期の重なりであって、原因の説明ではありません。「歯がかゆいから噛む」と断定できる根拠は確認できませんでした。口に入れるのは、子猫が世界を確かめる方法のひとつです。悪い癖ではありません。
口にしてしまったときは
といだかけらや研ぎカスを口にしてしまった場合は、量にかかわらず動物病院にご相談ください。
量の多い少ないで自己判断をしないでください。Web上には量で線を引く記述も見かけますが、判断できるのはその子を診た獣医師だけです。つくっている私たちにも判断できません。量にかかわらず、ご相談ください。
環境の側でできること——研ぎカスが出にくい素材を選ぶ
同じ段ボールの爪とぎでも、素材によって研ぎカスの出やすさは変わります。バージンパルプを使用したダンボールは、繊維が長く強いため、といでも途中で千切れにくく、研ぎカスが出にくくなります。密度ではなく、繊維の性質によるものです。素材ごとの違いは「ダンボールの爪とぎはカスが出る?カスが出にくい爪とぎの選び方とおすすめ」にまとめています。研ぎカスの量が少ない製品でも、ゼロにはなりません。誤食への向き合い方は、素材の選択とは別に必要です。
「早く用意すれば、将来家具でとがなくなる」——これはまだ確かめられていません
早く爪とぎを用意することが将来の家具での爪とぎを減らす、と検証した縦断研究は見つかりませんでした。用意は必要ですが、それだけで十分ではありません。
専門家は「早めに用意を」と勧めています 【行動学的に有力】
AAFP(2004年)には、家に迎えたときから爪とぎに慣れさせることが、人が困る場所での爪とぎの予防に役立つ、と書かれています。DePorter と Elzerman(2019年)も、子猫はまだ習慣が定まっていない可能性に触れ、サイザル麻・カーペット・段ボール・木など複数の素材を用意することが望ましいとしています。
ただし一文添えます。これらは専門家パネルの推奨と臨床レビューの記述であり、対照群を置いて検証した結果ではありません。
それを検証した研究は、見つかりませんでした 【出典が特定できない通説】
「早い時期に爪とぎを用意した猫のほうが、成猫になってから家具でとぐことが少なかった」——これを追跡して確かめた縦断研究は、今回の調査では見つかりませんでした。関連する研究はすべて、ある時点の状況を尋ねた横断的な飼い主アンケートです。
しかも、同じ臨床レビュー自身が都合の悪いデータを引いています。DePorter と Elzerman(2019年)は、同じ部屋に、しかも多くの場合はとがれている場所のすぐ近くに爪とぎを置いていた家庭でも、70%が人が困る場所での爪とぎを報告していた(Wilson ら 2016年による)としています。
用意することは必要な条件です。ただし、それだけで足りる条件ではありません。この記事が「早く買えば大丈夫」と書けないのは、そう書ける根拠が見つからなかったからです。
「爪とぎを増やせば家具でとがなくなる」も、因果としては言えません
Wilson らが2016年に『Journal of Feline Medicine and Surgery』誌に発表したインターネット調査(回答者4,331名・解析対象4,105名)では、家にある爪とぎが7個までの家庭では60.2%、10個を超える家庭では32.4%が、人が困る場所での爪とぎを報告していました。
この数字は、縦型の記事でも「1台を買い替えるより台数を足すほうが理にかなう」という文脈で紹介しました。ここで確認したいのは逆側です。但し書きが2つ要ります。①横断調査であり、因果ではありません。②「家具でとがれて困っている家庭ほど爪とぎを買い足す」という逆向きの説明も同じくらい成り立ちます。
「複数置けばとがなくなる」とは書けません。Web上の「爪とぎは1〜3個までにする」という目安も、掲載元をたどれませんでした【出典が特定できない通説】。この調査結果とも食い違います。置く数そのものより、猫が実際にとぎたい場所に置けているかが問われます。
だから、この記事が言えるのはここまでです
- 迎える日までに用意する理由は、生後8週未満の子猫にすでに好みがあるから(Zhang et al., 2019)であって、将来の家具の傷を防げるからではありません
- 用意したうえで、実際に使われているかを見ます
- 使われていなければ、置き場所と形を変えます
私たちに都合のよい整理ではありませんが、いまの根拠で言えるのはここまでです。
子猫の爪とぎに求めたい、5つの条件
子猫の爪とぎは、低くて安定していること、床に置けること、成長後も使えるサイズであること、素材がはっきりしていること、猫が過ごす場所に置けることで選びます。
【表4】子猫の爪とぎに求めたい条件と、その理由
| 条件 | なぜ子猫で効くのか | 確かめ方 | 出典・確信度 |
|---|---|---|---|
| 低くて、ぐらつかない | 床に寝かせた置き方のほうが長く使われた | 設置面が平らか、滑らないか | Zhang et al. (2019)【実験で確認】 |
| 床に置ける水平な形 | 抵抗が少なく研ぎやすい面を好むことがある | 伏せた姿勢で前肢が届くか | International Cat Care【行動学的に有力】 |
| 成長後も見通せるサイズ | 専門機関の案内は買い替えが前提 | 半年後・1年後の体格を想定する | International Cat Care【行動学的に有力】 |
| 素材がはっきりしている | 口に入れる時期と重なる | 素材表示と研ぎカスの出方 | 本記事の前章 |
| 猫が過ごす場所に置ける | 過ごす部屋に爪とぎがあることと関連の報告 | 生活の動線から外れていないか | Salgirli Demirbas et al. (2024)【調査で確認】 |
低くて、ぐらつかないこと 【実験で確認】
Zhang らの2019年の研究では、同じ網(スクリーン)素材でも、床に寝かせた置き方のほうが、垂直に立てた置き方より有意に長く使われました(21.67±2.95秒 vs 10.50±2.77秒、P=0.03)。背の高いロープ製のポストとS字型の段ボールのあいだには、差がありませんでした(53.83±13.94秒 vs 60.33±13.97秒、P=1.00)。著者は、猫は幅の狭いポストや高さのある直立型を好むとした先行研究に触れ、"Our findings do not agree, in general, with this conclusion."(私たちの結果は、おおむねこの結論と一致しない)と書いています。理由として挙げているのが、いま見た同じ素材でも水平に置いたほうが長く使われたという結果です。成猫向けの推奨が、子猫にそのまま当てはまるとは限らないということです。International Cat Care も、子猫やシニア猫は抵抗が少なく研ぎやすい段ボール製の傾斜型・水平型を好むことがあるとしており、方向がそろっています。

限界は繰り返します。各比較の被験数は5〜6頭、20分間の2択試験です。安定性について「倒れません」と断定できる製品はありません。猫は全体重をかけます。設置面が平らで滑らないかを確かめてください。
サイズは「いま」ではなく「これから」で考える
子猫は驚くほどの速さで大きくなります。成長の目安を体重で示します。
【表5】子猫の体重の目安(週齢帯別・中央値)
| 月齢の目安 | 週齢帯 | オス 中央値 | メス 中央値 |
|---|---|---|---|
| 約2ヶ月 | 8–10週 | 1.05 kg | 1.04 kg |
| 約3ヶ月 | 12–14週 | 1.72 kg | 1.54 kg |
| 約4ヶ月 | 16–18週 | 2.34 kg | 2.00 kg |
| 約6ヶ月 | 26–28週 | 3.45 kg | 2.64 kg |
| 約12ヶ月 | 52–54週 | 4.35 kg | 3.04 kg |
※Salt らが2022年に『PLOS ONE』誌に発表した論文の公開データ(KGC1_dataset.csv、Modellingサブセット 猫7,090頭・体重測定14,215件)からnyans編集部が算出したものです(2026年9月6日算出)。論文が公表した数表ではありません。対象は米国の短毛雑種で、測定時点で未避妊・未去勢の個体のみであり、日本の猫・純血種・避妊去勢済みの個体にそのまま当てはまりません。体長や立ち上がったときの寸法の平均値は、査読論文・公的資料ともに見つかりませんでした。

【図3】表5の中央値をグラフにしたもの。米国の短毛雑種・未避妊未去勢の個体のデータで、日本の猫や純血種、避妊去勢済みの個体にそのまま当てはまるものではありません。
選び方には2つの考え方があります。International Cat Care は、子猫用の爪とぎを成長に合わせて替えていくものとして案内しています。体格に合わせて買い、成長したら替えるという考え方です。一方、最初から成猫の体格に合う大きさを選び、長く使う考え方もあります。どちらが正しいかを比べた研究はありませんでした。
成猫になってからの形選びは「猫の爪とぎ、種類が多すぎて選べない|レオと試した8タイプの正直レビュー」、立ち上がってとぐようになったら「猫の爪とぎ 縦型の選び方|高さは「何cm」ではなくうちの子の伸びで決める」という選択肢もあります。
口に入れたときに、何でできているかがわかること
子猫の時期は口を使った探索と重なります。素材がはっきり書かれていること、研ぎカスが出にくいことは、選ぶときの条件になります。
ケージの中に置くとき
ケージ内への設置について、査読論文や専門機関の一次情報は確認できませんでした。お伝えできるのは設計上の条件だけで、「この型がおすすめ」とは書けません。条件は2つ、床面積を取らない薄い形が置きやすいこと、トイレや食器と離すことです。後者には根拠があり、AAFP と ISFM の2013年のガイドライン(Ellis ら)は、各リソースを別の場所に置くことを原則としています。
先住猫がいる家では
先住猫の爪とぎを子猫が共有してよいかを直接調べた研究も確認できませんでした。AAFP と ISFM のガイドラインは、環境リソースを猫が選べる状態であることを求めています。International Cat Care は、多頭飼育では猫が選べるだけの数を用意することを案内しています。先住猫のものを子猫が使うこともありますし、別に用意したほうが落ち着くこともあります。両方置いて、どちらが使われるかを見るのが確実です。
置く数と置き場所について
置く数と場所は、爪とぎ選びと同じくらい効きます。詳しくは「猫が爪とぎを使わないのは「場所」のせい?行動学から導く配置の考え方」にまとめています。なお、表4の条件を満たすものであれば、nyansの製品である必要はありません。
nyansの爪とぎから、表4の条件に当てはまる2つ
nyansの爪とぎには、本体3cmのケース入りと、高さ5cmのスタンダードMがあります。どちらも床に置く形です。
共通していること
nyansの爪とぎは、日本製で、バージンパルプを使用したダンボールでつくっています。繊維が長く強いため、といでも千切れにくく、研ぎカスが出にくくなっています。以下の2つは床に置く薄い形で、表4の1つ目「低くて、ぐらつかない」に対応します。ただし研ぎカスはゼロにはなりません。口にした様子があるときは、量にかかわらず動物病院にご相談ください。
ケース入り|本体3cmという薄い形
- ケース:幅40.5 × 奥行21.5 × 高さ3.5cm / 本体:幅39 × 奥行19.5 × 高さ3cm
- ¥2,980(税込)/ 5色(ネイビー・ホワイト・ウッド・マーブル・グレージュ)

外側のケースが研ぎカスを受けとめる形です。
スタンダードM|段差が低く、乗り降りしやすい形
- 幅46 × 奥行24 × 高さ5cm(Lは幅58 × 奥行34 × 高さ5cm)
- ¥3,880(税込)
商品ページには「薄型フラットなので段差が低く、シニア猫や子猫も乗り降りしやすいのが特長。」と記載しています。ケース入りとの違いは、幅と奥行き(46×24cm と 39×19.5cm)、高さ(5cmと3cm)、ケースの有無です。どちらが優れているという話ではありません。置き場所と、成長後をどう見るかで選び分けてください。
選ぶときは、表4の条件と照らしてください
繰り返しますが、表4の条件を満たすものであれば、nyansの製品である必要はありません。他の製品と見比べて、うちの子に合うほうを選んでください。
よくある質問
子猫の爪とぎは何ヶ月からですか?
「月」ではなく「週」で答えるのが正確です。獣医行動学の教科書(Beaver, 2003年)では生後5週ごろからとされています。ただし日本で販売を通じて迎える子猫は生後56日(8週)以降なので、迎えた時点ですでに始まっています。
猫に初めて爪とぎを用意するのはいつがベストですか?
迎える日までです。生後8週未満の子猫にすでに形の好みが確認されているため(Zhang et al., 2019)、迎えてから買うのでは確かめる機会が遅れます。International Cat Care も、迎える部屋に食器や寝床とともに爪とぎを置くよう案内しています。
子猫が爪とぎをしないとどうなりますか?
「爪とぎ器を使っていない」と「爪とぎをしていない」は別のことです。座布団や畳でガリガリしているなら、それはもう爪とぎです。将来を断定できるデータはありません。まず、家のどこかに爪あとがないかを見てみてください。
子猫の爪とぎの頻度はどのくらいですか?
回数の目安を示した研究は見つかりませんでした。1日何回が正常、という数字は書けません。見るのは回数ではなく、用意した爪とぎが実際に使われているかどうかです。理由そのものは、冒頭でご紹介した記事にまとめています。
子猫が爪とぎをかじる・食べるのは大丈夫ですか?
口にしてしまった場合は、量にかかわらず動物病院にご相談ください。量の多い少ないで判断しないでください。かじること自体は、子猫が口を使って世界を確かめる時期と重なります。
子猫の爪とぎに、またたびは使っていいですか?
キャットニップを使った実験では、生後8週未満の子猫の爪とぎ行動は変わりませんでした(Zhang et al., 2019)。またたびを子猫で検証した研究は確認できませんでした。またたびは一般に生後6ヶ月以降が目安と案内されますが、Web記事レベルの情報です。
子猫には小さいサイズを買うべきですか?成猫用ではだめですか?
どちらが良いかを比べた研究は見つかりませんでした。専門機関の案内は成長に合わせた買い替えが前提ですが、最初から成猫の体格に合うものを選ぶ考え方もあります。表5の体重の目安を見ながら決めてください。
ケージの中にも爪とぎは必要ですか?
必要・不要を示した一次情報は確認できませんでした。置く場合の条件は、床面積を取らない薄い形が置きやすいこと、トイレや食器とは離すこと(Ellis et al., 2013)の2点です。
子猫の爪切りはいつから始めればいいですか?
開始時期は体格や性格によって異なります。かかりつけの獣医師にご相談ください。爪とぎと爪切りは役割が違います。頻度は「猫の爪切りの頻度は?年齢別の目安と頻度を減らすコツ」、切らずにいた場合の話は「猫の爪切りをしないとどうなる?放置リスクと年齢別ケアの目安」にまとめています。
まとめ
- 爪とぎ器を用意する時期は、子猫を迎える日までです
- 爪とぎという行動そのものは、獣医行動学の教科書では生後5週ごろからとされ、販売を通じて迎える子猫はその時期をすでに過ぎています
- 早く用意すれば将来家具でとがなくなる、という研究は見つかりませんでした
わからなかったことも書きました。爪とぎを始める週齢を直接測った研究も、早く用意することの長期的な効果を確かめた研究も、見つかりませんでした。
それでも、迎える日に爪とぎを置いておく理由はあります。生後8週未満の子猫にも、すでに好みがあるからです。座布団についた小さな爪あとは、遅れの印ではありません。その子がもう自分でとぎ始めていて、私たちの用意がまだ追いついていないだけ、という合図です。追いつくのは、いつからでも間に合います。
※この記事は情報提供を目的としたもので、診断・治療に代わるものではありません。気になる症状や判断に迷うことは、かかりつけの獣医師にご相談ください。
※猫ちゃんによって好みや成長の速さは異なります。この記事の内容がすべての猫ちゃんに当てはまるものではありません。
出典・参考文献
【査読論文】
・Salgirli Demirbas Y, Pereira JS, De Jaeger X, Meppiel L, Endersby S, da Graça Pereira G (2024)「Evaluating undesired scratching in domestic cats: a multifactorial approach to understand risk factors」『Frontiers in Veterinary Science』11:1403068. doi:10.3389/fvets.2024.1403068
・Salt C, German AJ, Henzel KS, Butterwick RF (2022)「Growth standard charts for monitoring bodyweight in intact domestic shorthair kittens from the USA」『PLOS ONE』17(11):e0277531. doi:10.1371/journal.pone.0277531
・Zhang L, Plummer R, McGlone J (2019)「Preference of kittens for scratchers」『Journal of Feline Medicine and Surgery』21(8):691–699(オンライン初出2018年). doi:10.1177/1098612X18795258
・DePorter TL, Elzerman AL (2019)「Common feline problem behaviors: Destructive scratching」『Journal of Feline Medicine and Surgery』21(3):235–243. doi:10.1177/1098612X19831205
・Moesta A, Keys D, Crowell-Davis S (2018)「Survey of cat owners on features of, and preventative measures for, feline scratching of inappropriate objects: a pilot study」『Journal of Feline Medicine and Surgery』20(10):891–899. doi:10.1177/1098612X17733185 ※本記事の割合は同論文 Table 2(n=91)の値です
・Espín-Iturbe LT, Yañez BAL, García AC, et al. (2017)「Active and passive responses to catnip (Nepeta cataria) are affected by age, sex and early gonadectomy in male and female cats」『Behavioural Processes』142:110–115.
・Wilson C, Bain M, DePorter T, Beck A, Grassi V, Landsberg G (2016)「Owner observations regarding cat scratching behavior: an internet-based survey」『Journal of Feline Medicine and Surgery』18(10):791–797. doi:10.1177/1098612X15594414
・Ellis SLH, Rodan I, Carney HC, Heath S, Rochlitz I, Shearburn LD, Sundahl E, Westropp JL (2013)「AAFP and ISFM Feline Environmental Needs Guidelines」『Journal of Feline Medicine and Surgery』15:219–230. doi:10.1177/1098612X13477537
・Mengoli M, Mariti C, Cozzi A, Cestarollo E, Lafont-Lecuelle C, Pageat P, Gazzano A (2013)「Scratching behaviour and its features: a questionnaire-based study in an Italian sample of domestic cats」『Journal of Feline Medicine and Surgery』15(10):886–892. doi:10.1177/1098612X13481468
【書籍】
・Beaver BV (2003)『Feline Behavior: A Guide for Veterinarians』2nd ed., St Louis: Elsevier Science, pp.115–119.
【専門機関・公的資料】
・American Association of Feline Practitioners『Feline Behavior Guidelines』(2004) https://catvets.com/wp-content/uploads/2024/01/FelineBehaviorGLS.pdf
・International Cat Care「Scratching on furniture and carpets」/「Helping your new cat or kitten settle in」
・National Kitten Coalition (2022)「Good Kitty: Satisfying Your Kitten's Need to Scratch and Saving Your Furniture」
・環境省「STOP!生後56日までの犬猫販売!」 https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/stp56/ /「令和元年に行われた法改正の内容」 https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/1_law/revise_r01.html
【一次データ(自社)】
・株式会社nyans 公式商品ページ(ecforce、2026年9月6日取得):CASE_001_BLUE / NYAT_STD_M
・nyans編集部による子猫の体重の算出(PLOS ONE 公開データ KGC1_dataset.csv、Modellingサブセット 猫7,090頭・体重測定14,215件、2026年9月6日算出)
・nyans編集部による検索結果の確認(2026年9月6日)
・column-034「猫が新しい爪とぎを使ってくれない…飼い主52人に聞いた効いた工夫」(回答者52名)
【読者の声の出典】
・Yahoo!知恵袋 https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1393982828 / https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1288582842 / https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1365081108


